卒業率は約98%!
様々な専門分野も学べる通信制高校の魅力
「ヒューマンキャンパス高等学校」(以下、キャンパス高校)のHPやパンフレットを見させていただき、大変ユニークな試みをされている通信制高校という印象を抱きました。この度新たに「ヒューマンキャンパスのぞみ高等学校」(以下、のぞみ高校)を開校した理由について教えていただけますか。
永島 2014年4月に沖縄県名護市にヒューマンキャンパス高等学校を開校しました。開校時の収容定員は2,400人、その後6,000人に段階的に定員増を認めていただきました。さらなる生徒数増加への対応として定員を増やすこと、加えて本校スクーリング参加の負担感(旅費、移動時間、交通手段)を解消するため、全国各地からアクセス性が高いこと、かつ地域との連携した魅力ある学習を実施できる場所に新たに本校を設置し、多様な生徒さんのご要望に応えたいという思いがありました。
千葉県茂原市を選ばれたのはなぜでしょう。
永島 私どもは、通信制高等学校の本校として、廃校を活用させていただいています。私どもの設置プロジェクトはまず廃校活用を公募されている自治体様に企画を提案することから始まります。茂原市の公募型プロポーザルに応募したところ、私どもを優先交渉事業者に選んでいただきました。都心はもちろん、成田・羽田の両国際空港へ1時間という地理的優位性、さらには2年前まで中学校として利用されていた、校舎・施設の素晴らしさなどが、応募させていただいた理由です。実際に学校の設立には千葉県・茂原市とも様々な申請、協議、および諸手続等を進めましたので、入札から開校に至るまでには2年の月日がかかっています。
提案のどのような点が評価されたと感じていますか。
永島 理由は様々あると思います。キャンパス高校の時もそうでしたが、地域から学校がなくなるというのは地域にとって何よりも寂しいことなのです。まず学校ができ、全国各地から生徒が訪問し、地域と連携した学習や地域の人々との交流を通してその地域への愛着が育まれる。地域の人々にとっては、優れた地域資源を再発見する機会にもなります。学校は地域に持続的な活力を提供する場なのです。私どもは地域とのつながりをとても重視しています。その点が評価されたものと考えています。
通信制高校というと、ひと昔前までは様々な事情で学校に行けなくなった子供たちが集まる、そんなイメージを持たれていた印象があります。その点、ヒューマンキャンパスの生徒さんたちはいかがですか。
永島 もちろん、転入・編入による生徒さんも多いですが、当校の場合は半数以上が新入生ですね。中学3年時に最初の高等学校として選んでくれる生徒さんが増えており、保護者の方や中学校の先生方の間でも通信制への理解が深まってきた印象を受けています。当校では高校卒業を目指す一般通信コースや通学コースのほか、さらに専門分野を学べるコースも2つ用意しており、本人のやる気やライフスタイルに合わせて柔軟に選択できる体制を整えています。例えば、プロゲーマーや声優、漫画家、ITエンジニア、ドローン操縦士などを目指す生徒さんたちは高校の勉強に加え、それぞれの専門教育プログラムも受講できるので、魅力を感じる人は多いようです。こうした特徴が受け入れられていることもあり、キャンパス高校の卒業率は約98%と高い数値を維持しています。
ICT教育で先生の負担を軽減
生徒にはより質の高い教育を
ヒューマンキャンパスでは様々なICTツールを活用されているそうですが、この度「Möbius(メビウス)」に関心を持たれたきっかけは何でしょうか。
永島 新しい学校を創る上で、教育現場のDX、ICT教育の推進、新たな取り組みにチャレンジしたいという思いがありました。通信制の学校では、生徒さんから提出された課題レポートを先生方が添削指導するのですが、添削以前に「採点」にものすごい労力と時間が費やされているという問題があります。ただ、学校の立場からすれば、先生方にはやはり採点という作業ではなく、指導やフィードバックに時間を割いてもらいたい。生徒ひとりひとりと向き合える時間を増やしていただきたいという思いがあります。「Möbius」をうまく活用すれば、先生方の負担を軽減し、そのギャップを埋められるかもしれないと思ったのがきっかけです。
「Möbius」以外に、同様のプラットフォームやシステムも検討されたのでしょうか。
永島 もちろん、その他のプラットフォームやシステムも調べ、検討しました。ただ、問題作成や解答の表現力に「限界」を感じたのです。特に理数系の問題について、言葉で答える問題については対応しているものの、式やグラフによる解答には非対応だったりしたので、それでは本末転倒ではないかと。新たに導入するプラットフォームに合わせて先生方が時間を割いて出題形式を調整しなければならないわけですから。導入の目的が先生方の採点に関わる労力を軽減することにある以上、幅広い表現に対応しているというのは条件のひとつでした。その点は「Möbius」の強みであると感じました。
「Möbius」を導入されてまだ間もないですが、先生方をはじめ、現場の反応はいかがですか。
永島 先生方にとっては初めて触れるものですので、まだ馴染めていない部分は多々あります。特に今はこれまでの紙の問題をそのまま移植しているような状況ですので、この1年間運用してみて、様々な問題を工夫しながらプラットフォームに適したスタイルに変えていく作業が必要だと感じています。ただ、運用を始めてまだ1週間しか経っていませんが、生徒さんからレポートが送られてきた瞬間に採点アシスト機能が反映されていることに、理事や教職員は驚いていますね(笑)。しかも、生徒さんがレポートを送信した時間も把握できるので、個々の生活リズムも知ることができます。そうした情報を付加価値として活用、分析していけば、教育の質向上につながると思いますので、初年度はいろいろと苦労しながら試させていただき、次年度の運用に活かしたいと思っています。
「Möbius」に追加で搭載して欲しい機能やサービスなどはありますか。
永島 現在は他社さんの校務支援サービスやマルチメディア教材も併用していますので、そうした機能がパッケージ化されていると便利ですね。レポート提出については、手書き形式との併用ですが、2年後にはキャンパス高校を含め「Möbius」を活用し、オンライン形式に移行する予定です。
日本ではタブレットやパソコンを1人1台配布する「GIGAスクール構想」が本格的に始まり、デジタル教科書の導入なども進んでいますが、一方で現場の意識改革が追い付いておらず、ICT教育の発展を妨げているなどとも言われています。永島さんの目から見て、日本のICT教育の課題は何だと思われますか。
永島 「生徒たちに、やりたいことをやらせてあげる」という観点が弱い印象を受けます。せっかく1人1台端末を配布したのに、フィルタリングやインストールできるアプリを制限して、教科の学習でしか利用できていない様に感じます。生徒さんがやりたいと思っていること、自己の才能を開花・成長させること、そして将来の進路につながる探究、創作活動などにもっと活用してほしい。のぞみ高校では、クリエイティブアプリやプログラミング教材、教育ツールのアカウントを提供する予定です。学習を義務付けるのではなく、興味のある生徒さんが能動的に利用できる環境を提供していきます。私どもではICTを活用し、アダプティブな教育を実現することを目指しています。
最後に、サービスプロバイダーである弊社に期待することがあれば教えてください。
永島 導入前は「Möbius」についてまったく知らなかったぐらいですので、世の中には教育に活用できるICTツールがまだまだたくさんあるのだと思います。先日、学校でもメタバース空間体験を目的にVRヘッドセットを購入したのですが、世界ではすでにVRによる教育が進んでおり、理科の実験に取り入れたりされていますよね。うちでも様々なツールを積極的に導入し、活用していきたいという思いがありますので、世界の教育現場で活用されている最新のツールや事例などがあれば、ぜひ教えていただきたいと思っています。
通信制高校のヒューマンキャンパス高校・ヒューマンキャンパスのぞみ高校 (hchs.ed.jp)
Möbius(メビウス)
強力な数理計算エンジンを備え、カリキュラム作成や練習問題作成、オンラインテストの実施、自動採点、成績管理など様々な機能を備えた総合オンライン教育プラットフォーム。すでに世界400以上の学校で導入されており、学校によっては単位取得率が20%から80%に大きく上昇するなど、高い学習効果をあげています。また、先生の採点・添削などの作業を大幅に縮減することで、学校の運営コスト削減にも役立てられています。 Möbius (housei-inc.com)