日本最大級の画像データベース「時事通信フォト」刷新

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日本の報道における立役者として、長い歴史を持つ株式会社時事通信社様。時代の変容に柔軟に対応し、幅広いニーズに応える事業を展開されています。今回は、同社の境克彦氏(代表取締役社長)と弊社代表の管祥紅が対談を行いました。同社が提供する画像データベース「時事通信フォト」を軸に、過去・現在・未来を見つめ、情報社会における画像データベースの可能性を探ります。

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Author

執筆者

境 克彦

株式会社時事通信社 代表取締役社長

GUEST

話し手

境 克彦

株式会社時事通信社 代表取締役社長

HOST

聞き手

管 祥紅

HOUSEI株式会社 代表取締役社長

GUEST

話し手

境 克彦

株式会社時事通信社 代表取締役社長

HOST

話し手

管 祥紅

「公正・正確・迅速なニュース」を発信し続け80年

管:この度は「TOP対談」にご協力いただきありがとうございます。御社は長らく日本の報道を支えてこられた歴史がありますね。最近では自社のチャネルも展開されていますが、御社の沿革を改めて教えていただけますか。

境:はい。管さんはご存知かもしれませんが、我々の源流は、渋沢栄一が創設した「国際通信社」なんですよ。変遷を経て、太平洋戦争の敗戦後の1945年に時事通信社が創立されました。公正で正確かつ迅速な情報配信を続けて、来年で80周年を迎えます。通信社とは、元々自社媒体を持たず、新聞社などに記事や写真などを卸売りする会社のことを指すんですね。いわゆる「ニュースの卸問屋」と表現されることも多かったです。20世紀まではほとんど表に出る会社ではありませんでしたが、インターネットなどの通信技術の発達が進み、我々も自社のニュースサイトを保有して情報発信するようになったわけです。

管:そうでしたか。やはりインターネットの誕生は、御社にとっても大きな転換期になったんですね。国内外問わず、記事や写真を取り扱われていますよね。

境:はい。現在は国内に60か所、海外に24か所の拠点を置き、日々膨大な量の情報を収集しています。ロイター通信、AFP通信といった国際通信社とも提携して、世界中のニュースをユーザーにお届けしています。今お伝えした、契約メディアにニュースを配信する「マスメディア事業」の他に、行政機関や金融市場向けに専門的な情報を配信する「実務ニュース事業」、自社ニュースサイトを含むネットメディアなどへのニュース展開を行う「デジタルメディア事業」という3本柱で事業を構成しています。

管:なるほど。となると、日々我々が目にするあらゆるニュースは、御社が携わっているといっても過言ではないわけですね。

追加登録画像は1日1万枚以上。報道を支える画像データベース「時事通信フォト」

管:ニュースには写真が付き物ですが、写真データの管理・取引を行うシステムは、今回、我々HOUSEIがシステム刷新を担当させていただいた画像データベース「時事通信フォト」ですよね。膨大なデータ量を管理されているのだとか。そもそもいつからこのサービスはあるのでしょうか。

画像データベース「時事通信フォト」の歴史を振り返る境氏

境:画像を管理・販売する意味合いでは、フィルムの時代から事業自体はありましたよ。当時はネガフィルムで保存し、それらをプリントして各報道機関などへ販売していました。デジタルカメラが普及し始めた1990年代に、同じようにデジタルに移行していったんですね。初めの頃は撮影したデータを保存できる場所がなくてね、MOディスクに保存していたんですよ。
やがてインターネットが普及し始め、膨大なデジタルデータをデータベース化して運用すべきと考えました。初代のシステム「J-LoUPE(ジェイルーペ)」が完成したのが1999年ですが、MOディスクから画像データをシステムに移行するのが大変でしたね。40万件ほどのデータを蓄積するために5年ほどかかりました。
システムは時代とともに「時事通信フォト」として刷新を繰り返し、今回HOUSEIさんへお願いしたのは6代目となる大規模更新です。クラウド化することで、拡張性の向上や管理の負担軽減などを実現しました。
今では5200万枚の画像データを保有しています。自社のカメラマンや提携通信社から、毎日1万枚を超える画像データが登録されています。

管:膨大な枚数ですね!

境:オリンピック期間だと毎日2万枚近く登録されていますよ。国内外問わず、リアルタイムで登録、なおかつ瞬時に検索・ダウンロードができるという点が最大の特長です。

管:大容量のストレージも納得です。しかし、やはりデジタル化の流れというのは、社会全体に大きなインパクトを与えましたよね。今やデータは資産です。その資産を活用した事業展開は、さまざまな可能性を含んでいて期待が膨らみますよね。ちなみに、ネガやMOディスクは、もう社内に残っていないのですか。

境:それが、あるんですよ。明確な数はわかりませんが、社の一角にはネガなどが眠っています。傷みが進んでいるので完全にデータ化できないのもあるかもしれません。

管:貴重な歴史の軌跡が傷んでしまい、消失してしまうのは大変惜しいことですよね。もしかすると、その中に重要な写真があるかもしれない。その価値は計り知れませんよ。例えば、歴史的に重要な芸術や書道の作品なども、いつか物理的に保管することの限界が来ます。中国の東晋時代の書家・王羲之の作品だって、本物が仮にあったとしても、1700年以上経った今、すでに朽ちかけているんですよ。後世に伝えていくためにも、データベースの特性を活かし、歴史的な至宝もデジタルアーカイブ化することが必要不可欠なのではないかと考えています。

「伝統文化×画像データベース×AI」で広がる可能性

境:芸術や書道に注目が集まっていることに関していうと、まさに管さんの言われる通りです。昨年末、日本政府も「書道」をユネスコ無形文化遺産に推薦することを決めたといいます。すでに「能楽」や「歌舞伎」、「和食」など登録されていますし、歴史的なインフラの背景の中で、国内外問わず注目されているのは伝統文化の側面だと感じています。我が社の事業はニュースの報道が中心ですが、事業の領域を広げ、日本の伝統文化に関する検定事業の展開も検討しているほど、我々も注目しているんです。

管:御社も興味深い事業展開を検討されているんですね。実は弊社でも、香港でアートギャラリーと連携を取り、水墨画家の作品を高繊細のデジタル画像に変換したうえで、NFTの発行を行いました。初回は香港画家連盟の林会長にもご協力をいただき、お蔭様で完売しました。

「文化作品をデジタルアーカイブ化して、その価値を最大化したい」と話す管

境:それは面白いですね、今後も広がりが期待できそうです。アートや書道の魅力は実に奥深いですからね。たとえ文字が読めなくても、その価値は国境を越えて伝わりますから。余談ですが、社内にも「山鳥」と記されている書道作品がありますよ。そもそも書の始まりは象形文字ですから、元々が絵なんですよね。今にも鳥が飛び立つようにも見えて、とても美しいですよ、後でご覧に入れましょう。しかし今の話を聞くと、時事通信フォトの新しいコンテンツとして、書道作品にも力を入れるのも良い気がしてきました。

管:書道作品ですか、それは嬉しいですね、有難うございます。例えば時事通信フォトを活用して、書だけでなく芸術作品や歴史的に重要な作品なども御社の画像データベースに保有すれば、それらを活用してバーチャルの観光施設だって作れるかもしれません。場所の制限を超えたデジタル博物館なども実現できそうですね。素養を高めるという観点であれば、学校と連携を取り教育に活用するという手もありますよ。

境:日本に関するビジュアルコンテンツの需要はこれから特に伸びていくでしょうね。特に歴史や文化面の関心はより一層強くなりそうです。
他にもいろいろな画像データベースの活用方法があると見込んでいます。例えば動画。動画もどんどん解像度が上がっているので、動画から切り出した写真と、高精細で撮影した写真は遜色なくなると思います。そうなると、動画の需要は一層大きくなっていくでしょうね。

管:確かに、今は画像解析だけでなく動画解析もニーズが高まっているんですよ。監視カメラの映像を解析して、安全性の向上とか、事件・事故の解明などに貢献するケースも増えています。

境:AIがここまで飛躍的に進歩してくると、新事業の可能性も大幅に広がりますよね。例えば、多言語AIもどんどん発達していますし、インバウンドに向けたアプローチが当たり前になるのももうすぐなんじゃないですか。具体的にどうやって多言語化して発信するかは課題ですから、我々もまずは各情報配信事業に実装できるように、自動翻訳の実証実験を続けているんですけどね。

画像データベースの可能性を探る2人

管:なるほど。質問に回答したり文章を書いたりするのは、生成AIを使えば対応できますもんね。画像データベースへのコンテンツ管理自体も、音声入力や画像解析と組み合わせれば書誌情報の抽出もより容易になります。今ちょうどプロトタイプを作っているので、また機会があればお見せしたいです。

境:ぜひお願いします。益々ニーズが増える写真や動画については、管理や運用に関しても課題がありますからね。

管:はい、コンテンツを独自に保有する法人もより多くなるでしょうね。例えば画像データベースをテナント化して、法人ごとの管理のサポートをするのも良いかもしれませんね。

境:アイデアが尽きませんね。いろいろと楽しみです。

管:御社の画像データベースが持つ可能性を活かしながら、協力できる側面ではぜひ一緒にイノベーションを起こしていきましょう。有難うございました。

株式会社時事通信社
戦前の国策通信社である「同盟通信社」を前身とし、戦後1945年に設立。最新ニュースは、時事通信データ通信システムを通じて全国紙、ブロック・県紙、NHK、民放キー局、出版社など約140の契約メディアに送られ、新聞紙面や放送に利用されている。同時にインターネットの情報サイトを通じて、一般読者にも直接届けられる。
時事通信フォト:https://www.jijiphoto.jp

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