これまでのコラムで触れてきたように、顔認証技術は主に手間を減らしたり、セキュリティを強化したりするために用いられてきました。そのため、入退室管理を伴うオフィスやサービス店舗といった場所での設置が進められてきています。加えて、今後は店舗という形をとらないビジネスにおいても、顔認証の果たす役割は大きくなっていくと予測されます。
例えば物流業界。2024年4月1日から、働き方改革の一環として「自動車運転業務における時間外労働時間の上限規制」が施行されるのをご存知でしょうか。人手不足や荷物の増加、トラックドライバーの長時間労働など、多くの課題を抱える物流業界ですが、運用方法の抜本的な改革に自ら取り組む企業は多くありません。改革関連法によってなかば強制的に対応を迫られているというわけです。
一方で、改革により予想される問題の1つに「2024年問題」が挙げられ、物流行業界のみならず、バスやタクシーなど運送業全般で危惧されています。対応を誤れば、日本の産業界を大きく揺るがす危機的状況に陥るといわれているなかで、IT技術などの導入は課題解決のために重要なツールとなり、急務といえるでしょう。
HOUSEIの「WelcomIDアルコールチェッカー」は、顔認証技術と連携したしアルコール検知器で、検査結果の記録を自動化します。管理者の立ち合いを必要とせず、運転者一人でのアルコールチェックを可能にすることで、業務負担の軽減を実現します。また、2023年12月1日から施行される白ナンバー(自家用自動車)アルコールチェック義務化にも対応できます。
本稿では、2024年問題とアルコールチェック義務化について簡単に解説したあとに、「WelcomIDアルコールチェッカー」がどのように課題解決できるかを紹介します。
2024年問題とは、自動車運転業務の時間外労働時間を960時間とする規制が設けられることによって生じる問題の総称を指します。実際に考えられる問題としては、①ドライバーの労働時間減少に伴う、賃金減少から離職率の上昇、②人手不足による物流コスト上昇、③配送が滞る確率の増加、などが挙げられます。多少の違いはありますが、これらはバスやタクシーなどの自動車運転業務を伴う業界すべてで危惧されています。事業主側ができる解決策としては、業務の見直しや効率化、IT技術の導入などがあります。一刻も早い対応が必要とされているでしょう。
また、別の法改正になりますが、2022年4月の道路交通法改正に伴い、2023年12月1日から、白ナンバー(自家用自動車)のアルコールチェックが義務化されます。今までは、緑ナンバー(事業用自動車)を持つ企業に限定されていましたが、対象が乗車定員11人以上の白ナンバー1台以上を保持、または白ナンバー5台以上を保持する企業に拡大するという内容です。また、このような要件を満たす拠点には、道路交通法によって安全運転管理者の設置が義務付けられています。アルコールチェック義務化によって生まれたアルコールチェックの仕事を担うのが安全運転管理者と呼ばれる人物であり、業務内容として①運転前後の運転者の状態を目視等で確認、②記録の1年間の保存、③アルコール検知器を用いての検査、④有効なアルコール検知器の常時保持、が挙げられます。飲酒運転根絶のための重要な施策ですが、事業主側にとっては新たな運用方法の検討・策定、現場での管理業務増になります。
以上の法改正より、緑ナンバーは労働時間の削減に伴う業務効率化、白ナンバーはアルコールチェックの義務化という業務負担の増加、にそれぞれ向き合う必要があるのです。
それらの課題を一挙に解決できるのが、「WelcomIDアルコールチェッカー」です。具体的にはどのような利点があるのか、紹介していきます。
まず、業務の効率化です。改正法では、アルコールチェックの際に、運転者以外の人物が酒気帯びの有無の確認を行うこと、並びにその内容を記録して1年間保存すること、及びアルコール検知器を常時有効に保持することが義務付けられています。(安全運転管理者は、白ナンバーに関しては「20歳以上で自動車の運転の管理に関し2年以上の実務の経験を有する者」と比較的、専任しやすい条件が課されています。一方、緑ナンバー事業者には運行管理者と呼ばれる国家資格を持つ人物の選任が義務付けられています。WelcomIDアルコールチェッカーを導入することで管理者立ち合いが不要になり、スムーズな運用につながります。
次に、顔認証による個人の特定によって不正を未然に防ぐことができます。先ほどの話とつながりますが、安全運転管理者が不在の際は事業所で任意に定めた業務の補助者が、代理でアルコールチェックを行うことができます。しかし、常に同じ人物がアルコールチェックを実施するわけではないため、なりすましなどに気づけない恐れもあります。その工程にWelcomIDによる顔認証が入ることによって、高い精度で本人確認を行うことができます。また、追加のオプションにはなりますが、検査結果を顔認証画像付きでラベル出力することもできるため、タクシー運転手などの場合は毎朝のアルコール乗客にも安心感を与えられます。
さらに、アルコールチェックの検査記録も自動で行えるため、手書きや手打ちで起こりがちな不正やミスを減らすことが可能です。加えて、データ管理に関しても法律に則した形で自動書き込みを行うため、管理者側は一定期間に1回そのデータをダウンロードするだけとなります。
WelcomIDアルコールチェッカーは、アルコールチェック業務の効率化に役立つ製品であり、運送業界の抱える課題の1つを解決に導く一手となり得るでしょう。
これまでWelcomIDを導入することでアルコールチェック業務がいかに効率化するかを記してきましたが、そこには本来アルコールチェックが持つはずであった役割が復活してほしいという思いも込められています。
ある緑ナンバー事業者は、アルコールチェックが運転者の点呼も兼ねているため、完全な自動化には懐疑的でした。点呼というのは、ただ名前を確認するだけでなく、対象者の健康状態などを直接目で見て、会話から判断する意味合いも兼ねています。そのため、自動化によって顔を見る機会が失われ、本来点呼が持つ意味・意義を失ってしまうことが省人化によるメリットを上回ると危惧していたのです。しかし、結果として顔認証の導入は予想と正反対の効果をもたらしました。
すなわち、アルコールチェックが簡易化されたことで、事務作業に追われ形骸化していた点呼に時間を割くことができ、運転者の体調をきちんと把握することができるようになったのです。これは「人間の力を最大限活用するためにITがサポートする」というDXが本来目指すべき姿そのものであるように思えます。
今回紹介したアルコールチェッカーは、あくまで顔認証の1つのオプションにすぎません。組み合わせ方一つで無限の可能性を秘めているのが、顔認証の面白いところだと思います。
顔認証コラム一覧
【Vol.1】顔認証技術がアフターコロナの時代にもたらすDX化
【Vol.2】無人店舗が人間の価値を高める!?
【Vol.3】顔認証決済実現に向けて
【Vol.4】顔認証付きアルコールチェッカーが運送業で「今」必要なワケ